ガンバロウ福大!行政の「結」

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する東日本大震災をきっかけに、福島大学行政政策学類の教員有志でブログを開始しました。福大行政に関わる情報共有・情報発信の場として、このブログが、読者のみなさんとわたしたちの、また、みなさん同士の結節点になれば嬉しいなと考えています。一緒に手を携えて、この難局を乗り切っていきましょう。     (2012年3月26日記)

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「ここが安全だと信じたい」…ドイツの雑誌『Spiegel』(Spiegelonline-Unispiegel)から

こんばんは。夜の震災対策室(分室)からぴたです。
みなさん、2年目の「311」をそれぞれの想いで過ごされたことと思います。
ぴたは、「1年の節目」という気持ちもないわけではありませんが、1年でなにか区切りがつくというようには感じられず、街中のイベントからも、特集番組だらけのテレビからも遠ざかった静かな一日を過ごしました。
現実逃避、でしょうか?

さて、2月1日にドイツの雑誌「Spiegel」の記者の取材を受けました。
「福島の今」についてではなく、「福島大学の今」についての取材とのことで、僕のほかにも、清水修二副学長や留学生担当の事務の方にも話を聞いたようです。
その時の取材をもとにした記事が先日、掲載されました(ドイツ語の記事は→コチラ)。
「福島大学の安全安心な教育環境を目指す保護者の会」(会のブログは→コチラ)の方が、この記事を翻訳してくれています。許可を得てこちらに転載させていただきます。

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福島大学 「ここが安全だと信じたい」 福島から ハイケ・ゾンベルガー

原子力発電所の事故以来、福島大学のキャンパスの放射線値は高い状態が続いている。大学当局は危険はないと見なしているが、警告を発している教員グループがある。学生にとって、どちらがお気に召すのだろうか。どちらを信じるべきなのだろうか。

福島大学のキャンパスを、冷たい風が雪を舞い散らしながら吹いている。雪かきされた道を学生が二人、急ぎ歩いている。わき道のぶどう棚のブドウは、今年は誰も収穫しなかった。広場の一部は実験的に高圧洗浄で除染され、滑らかになった舗道の石が、ぴかぴか光っている。全ては、大地震とその後の福島第一原子力発電所の事故により、70キロ離れたこの大学に風に吹かれて飛んできた放射性物質の粒子が原因である。

二人の学生はナナとノブヤ。20歳で大学2年生である。彼女は教育学を、彼は国語を学んでいる。大学が気に入っているかと聞くと、二人同時に「はい!」という答えが返ってきた。
では放射線は?「報道によるとここは安全だといわれています。私はそれを信じています。」とナナは言う。ノブヤはより懐疑的だ。「僕は、そのとおりかどうか、100パーセント信じてはいない。でも安全だと信じたい。」しかし、結局のところ、学生は何も変えられない、と彼は付け加えた。ナナは「安全だという公的な保証を信じなければ、毎日の生活が混乱してしまう。」と続けた。"私達はここで生活し、勉強したいです。

その保証を信じないとしても、彼らには選択の余地がほとんどない。彼らは卒業するまであと2年かかる。そして日本では、在学中に大学を変えることは大変むずかしい。日本の学生は志望する大学に入学するために、大変な努力をする。名声のある大学ほど入学試験は難しく、また卒業後、地位や収入が良い。入学試験に合格すると、事実上卒業することはほぼ確約されている。

「何年か経ってはじめて、誰が正しかったかは明らかになる。」

福島大学では、約5000人の学生が通常より高い放射線を浴び続けている。政治学教授、ダイコクタロウ(41)はぶどう棚の近くに立ち、「この辺りは、特に放射線が高いのです。」と話し、雨どいの先を示す。彼の計測器は「20マイクロシーベルト/時」を表示している。そこから2、3歩、舗道の石の上1mの高さでは、1マイクロシーベルトを少し下回る値である。事故前のこの辺りの放射線値のおよそ25倍である。高くはあるが、専門家は危険ではないとする値である。
 
「私は十分に高いと思っています」ダイコクの言葉は少々大胆な響きを持つ。彼は社会科学系の学部研究室で、頭の後ろに手を組み話した。「何よりも、私の学生たちが病気になるのではないかと怖れています。彼らは18歳で入学します。彼らは若い。」学問を始める彼らが、他の大学を探して移ろうとするのであれば、彼にとってそれは全く理解できる話だ。健康上の理由から、多分その方がよいだろう。

「神経質すぎる」とシミズシュウジ副学長(63)は、政治学教授の大黒と見解を同じくする教員グループについて述べる。経済学者のシミズは穏やかな人物で、長年原子力発電をテーマに研究を続けており、最近再びチェルノブイリにも出かけている。「私たちは原子力発電を止めなければいけないと確信している。この苛酷事故以前からそのように考えていた。」

しかし、事故後、同僚の間に生まれた分裂について、彼は良いこととは思っていない。「私は学生たちにここは安全だと言う。他の教師は危険だと言う。そして学生たちはどちらを信じてよいのかわからない。」こうしたことは彼にとって「大変不愉快なこと」なのである。

多分、年月が経って初めて誰が正しかったかわかる。専門家の意見はキャンパスの放射線値が短期的には危険ではないと一致している。日本への飛行機に一回乗れば、100マイクロシーベルトぐらいまでの放射線を浴びる。胸のレントゲンをとれば、10から30マイクロシーベルトの放射線を受ける。しかし、放射能物質に汚染された大学キャンパスで、いわゆる低線量の放射線を何年も浴び続ける影響はないのだろうか。信じられる決定的な判断が無いため、それぞれが自分の結論を出さざるを得ない。

「私たちは初期の段階から、速やかに除染が行われるよう催促しました。」と放射線の危険を訴える大黒は言う。しかし、大学はこれまで雨どいの泥と葉っぱを取り除くことを1回しかしていません。しかし、大学の新学期は5月に始まったにもかかわらず、やっと昨年末にグラウンドの表土がはがされた。次のステップとして中央広場の除染が予定されているが「一年遅れている」と大黒は憤慨している。

「除染は高価で、他にも費用がかかる。」

大学当局にとって、特に財政上の問題がある。「我々は今まで政府から除染費用を全く受け取っていない。」と副学長のシミズは話す。これまで除染に1,500,000ユーロの費用がかかっている。今年、入学志願者を誘うために入学検定料を免除にしたが、それにより、600,000ユーロの収入を逸している。高くついたが、これは目論見通りとなり、3500人の若者が入学を志願した。昨年に比べ少し増えている。在籍する学生は現在年間5,000ユーロの授業料を払っている。

小さな大学にとってはお金を得る意味もあり、学生が去ることを受け入れられない。学生が他大学に編入しやすくするようにとの政治学教授のダイコクと彼の同僚の提案に、大学当局は怒っている。事故後1ヶ月の2011年4月、彼らはこの件を大学当局に要望したが、「彼らの答えはNOだった」とダイコクは言う。
 
副学長のシミズは、昨年北海道で学び続けることにした女子学生について話した。授業料収入が減ることについては、その他の多額の費用と同様に東電に請求はしているが、成果はまだない。

このような困難なとき、副学長にとって、William McMichael のようなそれほど「神経質」でない何人かの同僚がの存在がありがたい。彼は29歳で、1年半前から学生の国際交流員とし て福島大学で働いている。日本人の母を持ち、カナダのバンクーバーで育った彼は、明らかに、放射線被ばくに対して何の不安もないように見える。地震後、多くの外国人が日本を去ったが、彼は残り県の放射線に関する文書を翻訳していた。「私には情報があったし、政府を信じている。なぜ彼らが何かを隠さなければならなかったのか。」

放射線値はそれほど高くなく、日本では食料品の安全性を信頼することができるだろう。その上煙草、ファストフード、日本人学生や職員が毎年無料で受けることができるレントゲン撮影などのほうがより危険だろう。「日本人はレントゲンを撮りすぎている。彼らは医学的に一番放射線を浴びている民族だ」と彼は言う。

人々は放射能を理解し、盲目的に怖れてはならないとMcMichaelは話す。小さい息子と3ヶ月の娘を連れて避難していた妻が南日本から戻ることを彼と彼の妻が決めた。息子はもちろん泥遊びはしてはいけないが、何よりもMcMichaeは1月から家族と一緒に暮らせることを喜んでいる。

*********

福島大学では、いまだ中央広場など、学生が多く集まる場所の除染は進んでいません。
先日来、中央広場脇にある芝生の敷かれた緑地にモニタリングポストが設置されました。
数値は0.2~0.4マイクロシーベルト(毎時)を示しています。
モニタリングポストが設置された直後に芝生が張り替えられ、除染がなされた結果です。
教員会議にも報告がないので、どのような経緯でモニタリングポストが設置され、芝生の張り替えがなされることになったのか、良く分かりません(ぴたは敷地内の施設についての責任部局であるはずの「施設整備・環境対策委員会」に所属しているのですが、そこにも報告がないのです)。
学生が日々通行する中央広場の除染はまだなのに(1マイクロシーベルト(毎時)を超えています)、学生が立ち入ることがない緑地は、モニタリングポストの設置ととともに芝の張り替えが進みました。
中央広場からは緑地のモニタリングポストの示す数字が良く見えます。

「私たちは原子力発電を止めなければいけないと確信している。この苛酷事故以前からそのように考えていた」人が副学長でありながら、なぜこんなことになるのでしょう。

私たちにとっての「節目」は、まだまだ遠いことを実感します。

コメント

一学生として

大学内の教員の分裂に関する清水先生の「不愉快」という発言は、教育者としておかしいと思います。このような、自由な考えや教育を阻害する動きが、原発の安全神話を作り上げたということを全く考えていない発言のように思います。
また、学生にクリティカルシンキングを進めておきながら、多角的な視点を封じこめるような教育方法は、学生の判断力を鈍らせ、『無関心』を導く消極的な教育に繋がりかねないと思います。これは、学生の能力を過小評価している証拠です。私達もきちんと考え、判断した上で、リスクを承知しながら身を削る思いで福島大学で学問をしようとしています。(特に今年の新入生はなおさらでしょう。)その学生の決意を汲み取った大学運営をして欲しいです。

  • 2012/03/12(月) 10:10:45 |
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  • トールン #-
  • [ 編集 ]

OBの者です。よく、今年の受験生があんなに増えたものだと驚きましたし、果たして親御さんたちは納得した上で子どもたちを送り出したのか?と、正直不安になってしまいました。(それでも、県内の合格者が半数以上ということで、ある意味受験生たちは妥当な判断をしたといえるのでしょうか。)報道でも、副学長が「キャンパス内の除染などを進めた効果が、受験生の増につながったのではないか」というようなことを述べていたように思いましたが、学生が日々最も集まる広場の除染もほとんどしない中でどうしてそのようなことが言えるのだろう・・・と、卒業生として福大を誇りに思っていただけに、大変残念だし、虚しさや失望感を覚えてしまいました。
今、お世話になった恩師や先生方が福島のために精力的に活躍されていることは承知していますし、情報もいただいております。そうした中でこのような疑問を感じてしまう状況が福大の現実にあること・・・、本当に本当に残念でなりません。

  • 2012/03/13(火) 12:01:01 |
  • URL |
  • 福大OB #-
  • [ 編集 ]

学生さん、頼もしいご意見です。おっしゃるとおり、そして、リスクに対する考え方も、学問に対する決意が伝わってきます。翻訳なので、実際に「不愉快」という言葉を使われたかどうかはわかりませんが、今回の原発事故では「異なる見解に組織として真剣に向き合ってくれていたら・・・」と思えるような場面がいたるところでありましたね。警鐘を鳴らす人々がいたのに、それを生かせなかった、という苦い思いを日本中の人々が、今噛み締めていると思います。
 東京新聞3月12日社会面、ハワイ大学准教授の斉藤弘久さんという方が「試される私たち」という欄でこのようにおっしゃっています。
「・・日本の教育の問題点。私の専門は社会科学だけれど、理系の研究が世界のトップレベルにあるのに比べ、この分野で日本は弱い。教育現場でも社会科は暗記中心で問題解決能力を育てることがおろそかになっています。原発事故に官僚らが対応できないのは、教育のあり方にも原因があるのではないか。」
 この分野が弱いのは、それを社会全体が軽視してしまっていたからだと思いますが、公に判断して動くまでにいたる人選、議論の進め方や、意思決定の方法など、日常的に練習していなければできないのだと思います。まずは大学運営がそうあってほしいです。素晴らしい先生方がたくさんいらっしゃる福島大学だからこそ、余計にそう思います。
 斑目さんが、「菅首相の語気が強くて意見を言えなかった」というようなことをおっしゃって、目が点になった方も多かったのではないかと思います。語気がどうだろうと、立場がどうだろうと一人ひとりが言うべきことは言う、聞くべきことは聞くという態度を身につければ、社会は変わるような気がします。学生の皆さん、本当にがんばってください。心から応援しています。
 OBの方がおっしゃっておられるように、福大を誇りに思う多くの方が残念な気持ちに陥らないよう、全学として後悔の無い運営をお願いしたいと思っています。

この場を借りて

福大OBさんと東京都在住さんのコメント、このブログの閲覧者である私にとっても参考になります。ありがとうございます。私自身も震災以降、科学者や教育者(学問を専門とする人)が政治や社会とどう向き合うべきなのか考える機会が多々あります。(私自身、教育関係の仕事を目指しているので)このような点を含めて、今後この福島の地で勉強していきたいと思います。
いろいろな意見に触れることって、とても大切ですね。その媒体になっているこのブログにも感謝!

  • 2012/03/14(水) 21:12:32 |
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