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ガンバロウ福大!行政の「結」

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する東日本大震災をきっかけに、福島大学行政政策学類の教員有志でブログを開始しました。福大行政に関わる情報共有・情報発信の場として、このブログが、読者のみなさんとわたしたちの、また、みなさん同士の結節点になれば嬉しいなと考えています。一緒に手を携えて、この難局を乗り切っていきましょう。     (2012年3月26日記)

「福島大学」は今、どう見えてますか?…「高校訪問」で考えたこと

 朝の大黒です。おはようございます。
 9月も半ばになり、後期授業とともに、来年度の入試についても準備が本格化する時期になってきました。
 さてみなさん、ちょっと考えてみてください。
 「入試」や「新入生の受け入れ」を考えるにあたって、まず最初に、そう、一番初めに頭に思い浮かぶことはなんでしょうか?大学として、まずやるべきことはなんでしょうか? 

 行政政策学類では毎年、夏休みの期間を使って、各地の高校を訪問して受験生の動向について先生にお伺いし、また、学類の魅力を直接お伝えする「高校訪問」を行っています(各地の名所や名物も楽しみですね)。

 行政政策学類の高校訪問には歴史があります。

 そうした歴史と、今年実際に高校に訪問して、高校生やそのご家族と「現場」で直接接している高校の先生との懇談のなかで見えてきたこと、考えたことを塩谷さんが書いてくれました。
 高校に対するアンケート調査の結果や予備校のデータを、会議室に座って見ているだけでは分からないことではないでしょうか。

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 9月に入り、大学はまだ夏季休業、いえ今年は「補講期間」が続いていますが、そろそろ各種の委員会や教員会議も始まり、私たちもだんだんと普段の生活に引き戻されていく感じがします。

 9月から10月にかけてのこの時期の恒例行事と言えば、「高校訪問」。11月の推薦入試を皮切りに入試シーズンに入る前に、学類の「セールスパーソン」として、高校めぐりをしています。「えっ、大学の先生ってそんなことまでしているの」なんて言われることもありますが、黙って待っていれば受験生が集まる時代ではないようです。私学ほどではありませんが、毎年、県内外の高校の進路指導の先生を訪ねて、学類のPRや入試制度の説明をしたり、高校生の動向についてお話をうかがったりしています。

 とくに、来年度入試に関しては、震災や原発事故の影響でどの程度の志願者を確保できるのか、予備校からは厳しい予想も出されているだけに、とても気になるところです。毎年、高校訪問をするエリアは違うのですが、今年はまずは地元から固めようということで、福島県内と福島市に近い宮城県・山形県南部に集中して、高校訪問をすることになりました。

 夜室長は黒崎さんと二人で、9月7日に郡山市の高校を3校、8日にいわき市方面の高校を3校回ってきました。最近、何でもブログにアップして大騒ぎになるケースが多発しているようなので、印象に残ったことを支障のない範囲でレポートしたいと思います(笑)。

 まず、来年度の受験動向についてですが、訪問した高校の先生方はいずれも、「今年度と大きな変化はないのではないか」と仰っていました。放射能の影響を気にしている生徒(保護者)はすでに福島県外に避難しており、教員や公務員を志望して地元の大学に通う傾向は変わらないだろう、ただ、少なくとも大学4年間は県外に出したいという保護者もいるのではないか、ということでした。

 受験生がいなかったらどうしようかと思っていたので、少しホッとしましたが、学類の志願者・合格者の約6割を占める県外の高校生の動向が気になるところです。

 次に、震災及び原発事故の影響です。現在、小中学生の県外避難が大きな問題になっていますが、小中学生が減少すれば当然、高校の入学者確保にも影響が出てきます。また、いわき市の高校では、原発の影響で一時期、数十人の生徒たちが転出してしまった(いまは、放射線量が低いと分かり戻ってくる生徒もいる)そうです。このままでは、福島には放射能の影響よりも留まることを選ぶ「高齢者」と県外に出るに出られない「貧しい人」だけになってしまうのではないか、と懸念している先生もいました。

 実際、被災して家財や職を失っているケースが少なくなく、保護者の経済状況は非常に厳しいようです。進学を諦めて就職を目指す生徒たちも増えているようですが、逆に県内での就職は困難になっています(厚労省9日発表の「平成23年度『高校・中学新卒者の求人・求職状況』取りまとめ」によれば、今年7月末現在、来年3月の高校新卒者に対する求人は前年同期比14.7%減になっています)。

 例年以上に、進学を希望する高校生に対する手厚い支援が望まれますが、このような状況の中で、9月7日、福島大学は、「平成24年度入試の検定料(受験料)免除について」(→詳しくはコチラ(PDF))。の方針を打ち出しました。被災者に対する受験料を免除している大学は多いのですが、県の内外、被災者であるか否か、学類・大学院、推薦・一般入試の区別なく、すべての受験料(学類17,000円、大学院30,000円)を免除するのは福島大学が初めてでしょうから、ニュースなどで大きく取り上げられ、高校側からも驚きをもって迎えられました。

 いや、それ以上に驚いたのは、私たち自身だったかもしれません(今回は、記者会見の前日に学長名の文書が配付されたので事前に知っていましたが)。もちろん、大学の収入減(今年度の検定料収入は約7,200万円)にどう対処するのかも気になりますが、それ以上に、一切の受験料を免除することが社会からどう受け取られるかが気がかりです。「福島大学はこんな危機的状況にあるんだ」なんて感じる人はいないのでしょうか。

 なにごともメリットとデメリットがつきものですから、それらを比較衡量しながら判断していくことが必要です。受験料無料化はかなり思い切った措置ですが、志願者増加につながるかどうかまったく予測がつきません。かえって、被災者のためにする受験料免除とは異なり、「なんとか受験生を確保したい」という大学側の思惑が透けて見えることによるデメリットが大きいのではないかと思うのですが、大学執行部はどのように分析・判断したのか説明してほしいところです。

 個人的には、推薦入試の被災者枠をつくるとか、被災者の授業料を減免するとか(約7,200万円あれば、在学生の250名以上の学生の授業料を半額にできます)いった、「被災者支援」を優先してほしかったと思います(新聞報道によれば、今後、被災者授業料の減額も検討されるとのことです)。

 ついでにもう一点、気になるのは、「検定料免除」の文書に、「『歴史が変わる』とさえ言われる今回の災害に遭遇して、福島大学は、学生諸君と共にこれに立ち向かう教育、そして研究を発展させていかねばならないと考えます。この歴史的事情に、ともに手を携えて挑むような、受験生諸君を歓迎します。未経験のきびしい環境の中にあえて飛び込んで、その中から、他の何ものにも代え難い人生の糧を得んとする新人諸君の登場を、心から期待しています。」という文言があることです。

 「未経験のきびしい環境」というのが、かりに放射能に汚染された環境をさすのであれば、まず足元から改善して、学生の安全・安心を確保すべきだということは、このブログでも繰り返し主張してきました。今回、訪れた郡山市の高校(県立高校)は、国・県の指示をまたずに、放射線を計測し校舎の洗浄やグラウンドの表土除去をしていました(いわき市の高校では放射線量が低いのでグラウンドの除染は行っていません)。私たちは、大学の作成した、「放射線ガイドブック」や「除染についての取り組み」のパンフを持参して説明しましたが、相変わらず屋外では1μ?毎時を超えている状況を説明するのに苦慮しました。

 福島大学への志願者を獲得しようとするのであれば、基本的には、安全・安心して学べる環境を確保するための最大限の努力をしながら、福島大学でしかできない学びの機会を提供していくことしかできないのではないか、と改めて感じました。「歴史が変わっても大学は変わらなかった」とは言われたくないものです。

 閑話休題、最後に、「サテライト校(サテライト方式)」について書いておきたいと思います。この夏の高校野球の福島大会で、避難区域にある双葉翔陽、富岡、相馬農の3校による連合チーム「相双連合」が登場したり、小高工業高校がベスト4まで残ったりして、「サテライト校」について知っている方も多いと思います。現在、相双地区の8つの県立高校の生徒たちは、県北・県中・会津・いわき・相双の県内5地区にある、サテライト協力校の空き教室や体育館を使って、在籍している学校の先生を中心に学習をしています。

 今回、訪れたサテライト校は、もともと1学年約160人の生徒がいましたが、現在は、約200名の生徒が4つのサテライト協力校に分かれて学んでいます(約6割が県内外に転校)。1年生と2年生は20名以下で、間借りしている教室を半分に区切って使っていました。

 先生のお話では、いまは主要5科目を教える8人の先生が揃って落ち着いてきたが、当初は人のやりくりが大変だったそうです。サテライト校どうしが遠く離れているため、職員会議を開くのも、必要な書類に校長印を押すのも一苦労とのことでした。

 教育面で苦労しているところについては、次のようなお話をうかがうことができました。

?いままでは、数学などで教室を分けて使っていたが、いまは教室を3つしか使うことができない。また、人数が少ないので、国立文系・私立文系のように分けて指導することができない。

○原発事故があってすぐに退避したので、データや書類をすべて置いてきてしまった。東電職員の立ち合いのもと、学校には2回戻り、ようやく成績をつけたり、調査票を出したりできるようになった。

○独自の学校行事ができない。文化祭や体育祭は協力校に混ぜてもらっている。部活も陸上、野球、柔道などで週に1回集まって練習している程度である。

○3年生は少人数なので進学に対するモチベーションはあるが、受験の準備が1ヵ月ほど遅れていて、模擬試験の結果も散々だった。県外に転校した生徒たちは、なれない都会暮らしに加えて、勉強がついていけているか心配だが、ケアができていない。

○今年は出前講義をやる年だったが、それができなかったので、1,2年生のモチベーションをどうやって維持するかが課題である。

 県教育委員会では、来年度に向けてサテライト高の集約を検討していて、9月中に最終方針を出すことになっています。緊急時避難準備区域が解除されたのちに避難前の高校に戻るこ予定の高校もあるようですが、警戒区域にある高校については1ヵ所のサテライト校に集約する方針だということです。さらに在校生が減るのではないか、入学生が確保できるのか、という問題もあるでしょう。

 サテライト校は、先生も生徒も大変だという話はきいていましたが想像以上でした。ただ、そうした中でも、模擬試験を無料にする会社があり、早稲田大学の学生がボランティアで学習支援をするといった動き(→詳しくはコチラ)もあります。大学にできる被災者支援とは何か、あらためて考えさせられた高校訪問でした。

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