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ガンバロウ福大!行政の「結」

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する東日本大震災をきっかけに、福島大学行政政策学類の教員有志でブログを開始しました。福大行政に関わる情報共有・情報発信の場として、このブログが、読者のみなさんとわたしたちの、また、みなさん同士の結節点になれば嬉しいなと考えています。一緒に手を携えて、この難局を乗り切っていきましょう。     (2012年3月26日記)

【0613追記あり】除染に関する学習会(報告)

【追記】遅くなりましたが、学習会当日の模様をYoutubeにアップしました。会場からの質問とそれへの回答の部分についても公開しています。、コチラからご覧ください。

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昼の震災対策室から大黒です。2日間ブログの更新ができませんでした。
授業が始まって以降、通常業務と震災業務とが重なって、みんな大変なことになっています。
とはいえ、被災地からの情報発信はとても大切なこと…
被災地、そして原発事故の影響を受け続けている大学・学類として、学生さん本人ばかりでなく、その家族のみなさん、教員や事務職員の方々、地域や世界中のみなさんにも、お伝えしたいことはたくさんあります。
これからも「結ブログ」をよろしくお願いします。
さて、本日は去る金曜日に実施された除染に関する緊急学習会(詳しくは、こちら)についての報告です。
当日司会を担当した塩谷さんに、報告をお願いしました。

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一昨日の金曜日、NPO法人放射線安全フォーラムの田中俊一先生をお招きして、学習会「福島における放射能除染のあり方について」を開催しました。

tanakasensei.jpg

今回の学習会は、話が持ち上がってから開催までわずか10日という「緊急企画」でした。数日間しか広報ができず、どれだけの方に参加していただけるか不安でしたが、急きょ変更したL2教室(250人収容)はほぼ満席となり、この問題に対する市民の方々の関心の高さがうかがわれました。

kouenkaitanakasensei.jpg

辻学類長の挨拶に引き続き、さっそく、パワーポイントを使って、田中先生のお話が始まりました。お話は、

「1.福島第一原発の現状」
「2.環境への放射能放出と放射能除去の必要性について」
「3.飯舘村長泥地区での放射能除染試験」
「4.福島市での放射能除染」
「5.日常生活について」

と多岐にわたりましたが、そのポイントをご紹介したいと思います。

1では、福島第一原発の原子炉から大気に放出される揮発性放射能はほぼ出つくしていると推測され、今後、炉心の冷却が長時間止まるような事態が起こらなければ、大気中への大きな放射能の放出はないと考えられる。現在の最大の課題は、高い放射能で汚染された炉心冷却排水の処理であり、事故収束の時期を明確に予測するのは困難な状況にあるとのことでした。

2では、まず、放射能と放射線との関係、放射線被ばくとは何か、環境に放出された放射能と放射線分布についてのお話がありました。興味深かったのは、原子力安全委員会が現存被ばく状量として20m㏜を採用したが、成人を基準にした数値であり、幼児・子どもについてはその3分の1というのが国際的合意であること、また、文科省は5月末に1年間での学校等での被ばく線量を1m㏜以下になるよう除染を行うことを表明したが、これは、霞が関が将来訴訟で訴えられないためのものであり、20m㏜にしろ1m㏜にしろ、科学的根拠というよりも政治的な判断で決められたのではないか、という指摘です。

そのうえで、飯舘村のような計画的避難区域と、福島市のような比較的放射線量が高い地域のそれぞれについて、放射能除染の必要性が説かれました。

まず、前者については、現在、土壌等の放射能汚染は、セシウム137(半減期30年)とセシウム134(半減期2年)がほぼ半々であり、自然の減少はほとんど期待できず、したがって、セシウムを積極的に除去して、放射線量率や土壌等の放射能濃度を下げて、住民が村に復帰し生活できるようにする必要があるとのことです。

また、後者については、現在、広範囲にセシウムによって汚染されており(とくに高いのは、草むら、芝生、雨樋など)、放置すれば空気中に舞いあがるなど内部被ばくの要因にもなることから、年間の被ばく量を1m㏜以下にするには、学校・幼稚園、保育所、公園などでは徹底した汚染除去が必要であるということです。
 そして、文科省が推奨した天地返し(汚染された表土を下層の土と入れ替える)では、その後、200~300年間も「天地無用」の土地となることから、回避すべきであるという見解が示されました。放射性物質はきちんと管理されなければならず、「管理できない状態」にしてしまうことは避けなければならない、ということです。

3では、飯舘村長泥(ながどろ)地区において、5月に2回にわたって実施された放射能除染試験の成果が報告されました。民家の家屋・屋敷での除染とビニールハウス、水田、牧草地の除染が行われました。

民家では、周囲の樹木からの放射線の寄与が大きく、床よりも天井の方が線量率は2割から5割も高いそうです。除染は、屋根や雨樋の除染(高圧水洗)、屋敷周辺の樹木の枝打や伐採、屋敷前庭の表土剥離(ポリイオン溶液を散布)などが行われました。屋内線量率が、3.9~8.6μ㏜から3.1~4.3μ㏜へと低減しましたが、周辺環境の影響が高いため、より低減させるためには、民家の半径50~100mの範囲で除染をする必要があるとのことでした。

一方、農地の方は、7割から9割も放射線量率が下がり、耕作制限値の5分の1~2分の1まで低下するなど、大きな成果をあげたとのことです。

kouenkaitanakasensei2.jpg

ただ、問題は、今回の除染試験でも、約20㎥の汚染土壌が出ており、放射能除染に伴う廃棄物は、福島県全体では数千万トンになることが推測され、その対応としては、ベントナイトやゼオライトを底に敷き詰めてセシウムの移動を抑制した「廃棄土壌管理処分場」の建設が必要だということでした。

4では、学校等の放射能除染について、土壌、草むら、樹木、レンガ、コンクリート、校舎等の屋根、雨樋、ピットなどの場所ごとに、具体的な方法とともに解説されました。それらに共通する汚染除去の基本は、①汚染(放射能)を広げないように丁寧に取り除くこと、②セシウムを吸い込まないようにマスク(花粉用)をして手袋(薄手のビニール)をすること、③サーベイメータをもつ専門家のサポートを得ること、です。

最後に5では、私たちの日常生活における留意点について触れられました。食物については、日本の摂取基準値は欧州よりも厳しく定められており、よく洗って食べれば飯舘村長泥の野菜も美味しく食べられること(ただし、筍は基準値を超えている)、大気中には放射能がないので、窓を閉めたり、マスクをしたり、長袖を着ても効果はなく、洗濯物や布団も外で乾燥させても問題はないこと(ただし、風によって土ぼこりが舞うような場合は別)、さらに、年間100m㏜以下で健康被害が生じるという疫学的な調査結果はなく、あまり気にしすぎる心的ストレスの方が心配であるというお話もありました。

約50分の田中先生のお話の後、質疑に入りましたが、ここぞとばかりに次々と手があがり、マイク係の「ぴた」は、普段の運動不足を解消するかのように、階段教室のL2教室を上下左右と走り回ることになりました(お疲れ様でした)。

質問の内容は、家庭のブルーベリーの鉢植えの除染、農地でゼオライトを使いセシウムを固定することの是非、ひまわりの植栽による除染の効果、除去した草木を家庭ごみとして燃やすことの是非、汚染水が通学路を通る下水路を流れることの問題点、舗装面での水洗浄の効果など、福島での除染の実践に関することから、セシウムの物理的性質や福島市における放射能の危険性など多岐にわたりました。

また、質問だけではなく、福島大学や田中先生に対する要望(除染方法や除染を指導してくれる専門家のデータベース化なども出されました。)

田中先生は、一つずつの質問に丁寧に答えていただきましたが、ときに興奮した市民の方が、田中先生を遮って大声で発言する一幕もあり、司会を務めた夜室長は冷や汗びっしょりになってしまいました。

そんな中、今回の学習会で印象に残ったことをいくつか書いておきたいと思います。

今回の学習会に参加された市民の方々は、熱心に放射能問題についての文献を読み情報を得ているようでしたが、知れば知るほど、誰の言うことを信じたらよいのか分からなくなり、疑心暗鬼になっているように感じました。これは、放射能の問題については、現時点では、だれも確定的なことが言えないことによるのだろうと思います。

また、市民の方々が、自分自身でさまざまな方法で放射能除染に取り組んでいるということもよく分かりました。ただ、いずれの除染方法も試行錯誤の段階にあり、今後は、行政、産業界、研究者が協力して、除染方法の開発に取り組んでいくことが重要であると感じました。

また、福島における除染は、学校や公園だけではなく、家庭も含めた地域社会全体で取り組んでいく必要がありますが、最終的には、放射線廃棄物の処分(管理)の問題があり、これをクリアできなければ、除染は進まないということを痛感しました。除染にかかる費用負担も含めてトータルに問題を考えていかなければなりません。

田中先生からは、セシウムは移動しにくいのでそんなに焦って除染に取り組まなくてもよいというアドバイスもありましたが、市民の間には、一刻でも早く少しでも多くの放射能を除染したいという一種の焦りや、行政がなかなか動かないことに対する苛立ちのようなものがあるように感じました。

学習会の翌日、田中先生から「御礼」のメールが届きました。
そこには、「市民の方の率直な意見を聞くのは、往々にして言葉のやりとりになりがちですが、昨日は私としてももっと県民の立場で努力しなければならないということを学びました。」と書かれていました。本当に頭が下がる思いです。

伊達市では除染のモデル作りに取り組むことになり、田中先生がその技術的コンサルに就任されるようです。伊達市の活動には、文科省や原子力機構の協力も得られるとのことで、今後、福島県における除染活動が進むことが期待できそうです。福島大学として何ができるか、今後、検討していくかなければなりません。また一つ宿題が増えました。

今回の学習会の模様は、田中先生のご厚意により、ビデオ録画させていただきましたので、近いうちに、ネット上で視聴できるようにしたいと考えています【今後、追記によりお知らせします】。

田中先生のお話をきいて、ぴたは、さっそく土曜日から、大切に育てているブドウ棚付近での除染に取り組んでいるようですが、果たして効果はあったのでしょうか

それでは、ぴたさん、現場から中継をお願いします・・・(つづく)

コメント

福島から即刻避難を

放射線安全フォーラムがどの様な団体かを知れば信用できないことは明らかです。福島の少なくとも浜通り、中通りはもう住めません。モルモットになるだけです。生き延びるために即刻避難を。安全を求めることは恥じる様なことではありません。

福大(行社)OBです。
同じ「俊一」でも、田中さんは今の行動から信頼してみようと思っています。

私は個人的にサーベイで測定しておりますが、
福島市内でも場所によって全く汚染状況が違うので、行政には極め細やかな対応が望まれます。

そして福島市内を大規模除染したとしても、これからは「水・食」の確保が大きな問題になると思いますので、どうか福大の先生方、よろしくお願いいたします。

  • 2011/06/07(火) 17:42:47 |
  • URL |
  • ごんだろう #3GUhKZ6A
  • [ 編集 ]

天下り団体

なんでこんな人を現地に送り込むのでしょうか???
天下り団体

食物については、日本の摂取基準値は欧州よりも厳しく定められており
-->これはウソです。国際基準よりもかなり甘いのが現状です。

よく洗って食べれば飯舘村長泥の野菜も美味しく食べられること(ただし、筍は基準値を超えている)
-->ゼッタイに食べてはダメです。特に子供。

年間100m㏜以下で健康被害が生じるという疫学的な調査結果はなく

-->広島で被爆した人のうち、浴びた放射線が少量で健康に影響が少ないとされた人でも、被爆していない人よりがんで死亡する率が高いことが、名古屋大情報連携基盤センターの宮尾克教授(公衆衛生学)らの研究グループの疫学調査で分かった。
研究結果は、既に日本衛生学会の英文雑誌で発表。
被爆者を被ばく線量によって極低線量(0・005シーベルト未満)、低線量(0・005-0・1シーベルト未満)、高線量(0・1シーベルト以上)に区分。それぞれの各種がん死亡率を非被爆者のものと比較した結果、極低、低線量の被爆者は非被爆者よりも固形がん(白血病など造血器系を除くがん)で1・2-1・3倍高く、肝がんでは1・7-2・7倍、子宮がんは1・8-2倍高かった。
(低放射線も高いがん死亡率 非被爆者と比較調査
2008/08/04 共同 引用)

Re:

 こんにちは。ぴたです。コメントありがとうございます。
 原発事故直後とは違い、最近では、いろんな講演会や勉強会、DVD上映会などが大学をはじめ、いろいろなところで開催されています。講師の先生も多様で、それぞれの方がそれぞれのお考えを表明されています。
 講演を聞く人たちも、自らいろんな情報に接していますし、「自ら考える」、という姿勢を常に持っておられると思います。講師の先生の話をうのみにするわけでもありませんし、逆に、すべてを信じないという態度でもないのだと思います。
 3月のような、「放射能のことを一部の人を除いて、誰も、ほとんど何も知らない」、という状況ではなくなっています。

  • 2011/07/06(水) 14:47:40 |
  • URL |
  • ぴた #-
  • [ 編集 ]

「薄めれば放射能は無くなる」という概念

「放射線の危険、誰が得をし誰が損をするのか」
http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-1267.html

>それならなぜ広島や長崎に人が住んでいるのでしょう

 その答えは要するに放射能が無くなった、と言うことでしょう。もっと厳密に言えば放射線量が、人体に悪い影響を与えないレベルまで低下した、と言えると思います。
 そうだとするとどのようにして低下したのかと云うことになります。ここで考えられることは、一つに放射性物質の自然崩壊があります。放射性物質の半減期は核物質にもよりますが、数分、数時間、数日から、数百年、数千年、などと様々で、原爆投下時からの時間を考えれば、自然崩壊により安全なレベルまで完全に低下したとは考えにくいと思います。
 そこで考えられるのは、人工的な放射性物質の除去、隔離、遮蔽によることです。しかし、原爆投下時や、その後のしばらくの間に核物質の充分な知識もなく、放射能の測定をくまなくやって、対策が立てられたとは考えられません。ただし、ツナミの後で生じたような瓦礫を処分したり,燃やしたりすることによって放射性物質が移動、除去されたり,町の復興に伴う家屋やビルの建設や道路の舗装により、放射性物質が遮蔽されたことはじゅうぶん考えられます。しかしこれでは放射性物質が無くなったのではなく、瓦礫の処理場や、建物やコンクリートの下に眠っていることになります。もしそうなら、それが放射線を出し続け、街全体の放射線量は他の地域と較べ高くなると考えられますが、これは聞いたことはありません。また、建物などの立て替えや道路工事により、残存放射能があるとも聞いたことがありません。このように考えると、放射性物質が大半消えたとしか考えられません。
 そこで考えられるのは自然の浄化作用によると云うことです。この浄化作用により放射性物質は薄められ、結果として人体には無害になったと考えられます。ここで重要な概念は、有害な物質は薄められると危険度を表す“基準値”以下になるということです。多くの人はこの概念が受け入れ難いようです。だって半減期が数百年、数千年のものは消えるわけではなく、必ず残るはずですから。でも考えて見て下さい。あの猛毒のシアンなどの化学物質や重金属も天然には必ず存在しています。しかし,それも薄まると “基準値”以下になり,飲んだり,食べたりしても良い,即ち無毒と同等になるのです。もちろん放射物質を含む化学物質の一部は,物理・化学的、あるいは生物学的に蓄積される場合があります。しかしそれもある期間が経てば繰り返される蓄積により結局希釈されてトータルでは減衰して行き,“基準値”以下になると思われます。例えばストロンチウムなどはカルシウムと挙動を共にするため,骨とか,貝のからに取り込まれます。このような作用が毎年起こり、それが続けられると,希釈効果により,ストロンチウムはだんだん薄められることになり,先ほどの“無毒化”につながって行きます。
 さて広島、長崎に人が住んでいる理由がお分かりになったでしょうか。悲劇の後、当時の専門家の多くは広島、長崎に人が住めなくなったと考えた人もいたでしょう。チェルノブイリでもそう考えられていましたが、事実とは違っているようです。おそらく意外と短い間に放射能は人体に安全なレベルまで減衰したのではないのでしょうか
 自然浄化と言いましたが,私は水が最も重要な要因と考えています。水は特殊な化合物で,全てのものを良く溶かす性質があります。また液体、気体(水蒸気),固体に相互に変換し循環します。この水が放射性物質を溶かし,雨が降ると溝に流れ込み,やがては川に,そして最終的には海に流れ込みます。あの海に,即ち広大な太平洋にです。その希釈効果は推して知るべしです。
 「薄めれば放射能は無くなる」という概念さえ受け入れば,これからの対策は簡単です。例えば学校の運動場で放射能が高い場合,その薄め方を考えれば良いのです。放射能が地表の1cmのところにあったとします。この場合10cmの所を掘り返し,まぜまぜにして元に戻すとその希釈率は1/10になります。そうすると仮に放射能の値が基準値の2倍だったとすると,基準値以下の値になるはずで、安全になります。実際には混ぜた土による放射線の遮蔽効果により1/10より遥かに低くなると思われます。また、まぜまぜにする段階で,水はけの良い土を混ぜておくとしばらくすると放射性物質は流れ去る効果が得られるでしょう。そうした上に汚染していない土を載せれば,もっと安全なものになるでしょう。
 もう一例挙げましょう。汚染地域の米農家が苦しんでいます。私なら,これらの人達に米を作るように推奨します。秋に収穫後、精米した後の米に基準値以上の放射能が検出された場合、国で買い取るようにします。2年目でも同じです。基準値以下になるまで続けます。この処置は何といっても農家の人達を一番幸せにすると同時に,水田の浄化を進ませる効果があると思います。2、3年目で基準値を下回るのではないでしょうか。考えてみれば、海水に浸かった水田の処理と同じですね。塩分も水で洗い流すのが一番なのです。表層を削ってどこかに移すことなどはしないでしょう。また汚染箇所は水を使い洗い流し除染すれば良いだけのこととなります。因に、東電が低放射能汚染水を流しましたが,上に述べた理由で私は緊急時の正しい処置と考えます。
 日本は、雨がよく降り,川も多く,水に恵まれています。瑞穂の国です。海に囲まれた島国です。浄化は他のどの国よりも速やかに起こることでしょう。日本に生まれ育ったことに、神に感謝せずにはいられません。

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