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ガンバロウ福大!行政の「結」

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する東日本大震災をきっかけに、福島大学行政政策学類の教員有志でブログを開始しました。福大行政に関わる情報共有・情報発信の場として、このブログが、読者のみなさんとわたしたちの、また、みなさん同士の結節点になれば嬉しいなと考えています。一緒に手を携えて、この難局を乗り切っていきましょう。     (2012年3月26日記)

「ぴた」と「ぺた」

 先日、「震災対策室の取り組み②-授業開始に対する学生意向調査」をお伝えしたところ、震災対策室の取り組みについて一定程度評価する意見がある一方で、学生全体の意向についても調査すべきではないか、予定通り授業を開始するべきではない、学生も声を上げるべきだ、など数多くの意見が寄せられました。

 私たち(学類教員有志)が、学生意向調査を実施して感じたことは、どのような情報に依拠するかによって各人の考え方が大きく異なるということです。現在、新聞、テレビ、ネットなどでは無数の情報が飛び交っていますが、肝心の一番知りたい情報が伝えられないことがしばしばあります。また、さまざまな分野の「専門家」が発言していますが、その意見が対立・矛盾していることが少なくありません。多くの人は、いったい何を、そして誰を信用してよいか分からない状態に陥っているのではないでしょうか。

 このような情報の過剰と不足、相互の対立と矛盾という中で、私たちが情報を発信する際には、強い戸惑いと緊張を覚えます。なぜなら、いくら「有志のブログ」とはいっても、教員から発せられる情報は、それなりの信憑性があるものと受け取られ、学生や保護者の皆さんに対して強い影響力を与える可能性があるからです。

 しかし一方で、学生の皆さんが、自分の意見を形成し行動を決めるうえで必要な情報を、事前に提供し説明することは、私たち大学人の責務でもあります。そして、大学がどのように考え、またどのような対策をとろうとしているのかについて、学生の皆さんには知る権利があると考えます。

 今のところ、今後開かれる「新入生を迎える会」やゼミなどで、「放射線対応マニュアル」や「地震発生時の初動マニュアル」が配付され、大学側の考え方が説明される予定ですが、それでは遅すぎると私たちは考えています。また、これまで大学側から発信されてきた情報は、内容や説明が不足していて、かえって不安を感じる方もいるのではないかと懸念しています。

 そこで、私たちは、保護者だけではなく、学生に対しても大学の公式見解を示すよう要望するとともに、このブログを通じて、授業開始前の今必要と考える情報を提供して、少しでも責務を果たしていきたいと考えました。

 私たちがこのブログ記事で目指したのは、①県外にいる方にも福島についての情報を提供する、②福島大学の考え方の基本についてお知らせする、③現在、福島大学で論点になっていることを理解していただくことにあり、大学の「広報」を行うことでも、特定の個人の見方や考え方を押し付けることではありません。

 そのことを強調するために、このブログ記事は、塩谷と大黒が共同執筆しましたが、架空の人物の対話形式をとることにしました。できるだけ事実に基づいて記述することを心がけましたが、情報の取捨選択や表現方法には、発信側の主観が混じらざるをえません。そのことに留意して読んでいただきたいと思います。


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大好評の「ひろやすの部屋♪」

いつもは部屋にお客さんをお招きしてインタビューを行っていますが、今日は趣向を変えて、「ぴた」とそのゼミ生「ぺた」の対話形式でお伝えします。

ある日の対策室 「ぴた」が、好物の「のり煎餅(実は支援物資)」をバリバリとかじっていると、携帯電話が鳴った チャララー♪ チャララー♪


ぴた「はい、国宝研究担当副楽長のぴたです♪」

ぺた「……」
ぺた「(気を取り直して…)ぴたさん〔注:ぴたは、学生に「先生」ではなく「さん」づけで呼ばせるという噂がある〕、こんにちは。2年ゼミでもお世話になる、ぺたです。」

ぴた「あー、ぺた君。久しぶり、元気にしてた? まだ実家にいるの?」

ぺた「そうなんです。4月23日で休校が解除になったから早く大学に行ってラグビーの練習もしたいんですけど、親が心配して、授業が始まるギリギリまでこっちにいたほうがいいんじゃないかって。隣の県なのにあんまり情報が入ってこなくって、困っているんですよね。もうみんな福島に戻っているんですか?」

ぴた「25日頃から少しずつ戻ってきているよ。公務員試験の勉強で演習室を使っている学生もいるよ。大学も賑やかになってきたけど、大学の中でいま一番騒がしいのは、この震災対策室じゃないかな(笑)」

ぺた「ぴたさんは、GWなのに震災対策室なんですか? 震災対策って、そんなに大変なんですか? それとも行くところがないとか・・・」

ぴた「そうなんだよ、みんな独身のボクに仕事を押しつけて、遊びに行っちゃってさ・・・」
〔周囲から、「ウソ言うんじゃない!」の声が〕

ぺた「ああ、震災対策室の皆さんも一緒なんですね。いつもブログ読んでいますよ。やきのり先生の記事はいつも面白いなあ。」

ぴた「・・・」

ぺた「もちろんぴたさんの記事もサイコー!(汗) ところで、福島市の状況はどうですか? 震災前に戻っているんですか?」

ぴた「3月11日の大震災では、ライフラインが止まって大変だったけど、今はすべて復旧している。JRは、東北本線も新幹線も運転再開しているけど、徐行運転している区間があるから時間に気をつけないと。車のほうは、ガソリンは問題ない。ただ、道路はひび割れや陥没して応急的に補修している箇所もあるから、スピードの出し過ぎには注意しないとね。そうそう、全国ニュースにも出ていた4号線で土砂崩れしていた箇所(伏拝の坂)は、もとの二車線に戻って渋滞は解消されている。スーパーは時間短縮で営業しているところがあるけど、食品や日用品は普通に手に入る。ミネラルウォーターなんかは、都心よりも豊富にあるんじゃないかな。オレンジやきのりとブルーにいむらは、『地域貢献』と称して、夜な夜な飲み歩いているよ。」

ぺた「大学はどうなんですか。福島市内でも校舎がつぶれた大学がありましたよね。」

ぴた「福島大学は、金谷川キャンパスに移転してから30年少し経つ。その当時に建てられた建物もあるから、大地震に耐えられるのか心配していたけど、建物が倒壊したり大きく破損したりする被害はなかったみたい。図書館は、書架から多量の本が落下して大変だったけど、避難所の方や教職員が手伝って本を戻したので、予定よりも早く、4月25日から開館(ただし、サービスの制限あり)している。詳しくは、図書館HPに載っている。問題は研究室のほうかな。ブログでも報告したようにひどい状況だけど、まだほとんど手をつけていないいい加減なひともいるみたいだ。」〔ひろやす室長、ぴたをジロリと睨む〕

ぺた「そうなんですか。じゃあ、授業は予定通り12日に再開するんですよね。」

ぴた「なんだ、あまりうれしそうじゃないね。」

ぺた「そりゃあ、友だちや先生にも会いたいですよ。でも、余震もそうだけど、やっぱり放射能が怖いですよ。先日のニュースでは、小佐古内閣官房参与が辞任したと言っていたし、大学は本当に安全なんですか?」

ぴた「やっぱり気になるよね。僕は原発や放射能の専門家ではないし、安全かどうかの評価はできないけど、分かっている範囲ででも話をしておかないとね。放射線量と人体への影響の話は聞いたことがある?」

ぺた「ニュースや新聞でやっている、シーボルトじゃなかった、シーベルトの話ですよね。一般公衆の線量限度(自然放射線と医療目的を除く)が年間1ミリシーベルト、自然界で浴びる放射線量が年間2.4ミリシーベルト、そして、年間100ミリシーベルト以下の被爆であれば人体への影響がないと言われているんですよね。」

ぴた「その点は、先日大学で開かれた教職員対象の講演会での話によると、広島・長崎の原爆被爆者の半世紀以上にわたる追跡調査から、100ミリシーベルト以上では、被曝線量が高いほど、がん発症率が直線的に増えることが分かっているらしい。つまり、線量が2倍になれば、がんになる確率に2倍になる。でも、今回の福島原発のように、100ミリシーベルトよりも低い線量の放射線に長期間にわたって曝される場合の影響については、正直よく分からないそうだ。がん発症には、食生活や喫煙など被曝以外の要因もかかわるから、放射線の影響かどうかについては疫学的に証明されていないようだ。ただ、国際放射線防護委員会(ICRP)では、放射線防護の観点から、『低線量でも直線的にがん発症率が増え、しきい値がないという仮説(LNT仮説)』に立っているんだ。」

ぺた「なるほど。で、福島市はどうなんですか? 毎日テレビのテロップにその日の放射線量が出るって聞いたんですが。」

ぴた「そうだよ。テレビでも確認できるけど、文部科学省がHPで、毎日、『福島第一原子力発電所の20km以遠のモニタリング結果について』を発表している。これを見ると、5月8日は、福島市は県庁のある杉妻町(原発から62キロメートル北西)で1.2マイクロシーベルト/時、福島市から相馬市に向かう途中の大波滝ノ入(原発から56キロメートル北西)で2.0マイクロシーベルト/時という値がでている。」

ぺた「同じ福島市内でも随分と違うんですね。原発より遠くても高いことがあるんですか?」

ぴた「原発が爆発したときの風向きや降雨の影響で、違いがでるんだって。福島大学の近くにある福島県立医科大学のデータはリアルタイムで見ることができる。」

ぺた「福島大学でも独自に放射線量の測定をしているんですよね。」

ぴた「共生システム理工学類の先生方がモニタリングを続けていて、その結果は、大学の緊急連絡HPに公表しているよ。これを見ると、4月27日の測定では、屋外では、野球場のマウンドが2.06マイクロシーベルト/時、ラグビー場の中央が2.00、室内だとぐっと下がって、第2体育館が0.22、L4教室が0.11(24日データ)になっている。」

ぺた「げっ、ラグビー場ってそんなに高いんですか?」

ぴた「大学の資料によれば、今年の5月1日から来年の4月30日までの1年間、ラグビー場にいたとすれば積算で15ミリシーベルトになる。体育館では、1.62ミリシーベルト、L4教室で0.79ミリシーベルトという試算がでている。まあ、24時間365日、ラグビー場にいることはないだろうから、実際には、そこまで被曝することはないけれど、屋外での授業や課外活動をどうするかは議論の争点になるだろうね。」

ぺた「じゃあ、普通に生活しているとどのくらい被曝するんですか?」

ぴた「今後みんなに配られる予定になっている『放射線マニュアル(学生版)』には、年間被曝量の推定例が二つ出ている。一つは、ラグビー場の中央で8時間、研究室で2時間、アパート14時間、市内の年間被曝線量を13ミリシーベルトと仮定(屋内は60%の遮蔽と仮定)して、年間で8.1ミリシーベルト。もう一つは、大学屋内で8時間、通学2時間、木造自宅屋内14時間と仮定して、年間で4.4ミリシーベルトになる、と書いてある。」

ぺた「一般公衆の線量限度の1ミリシーベルトと比べると、数倍の値になりますよね。それに、5月1日より前から福島にいた人は、もっと高い数値になりますよね。内部被爆だって心配だし。それでも政府は安全だと判断しているんですか?」

ぴた「政府の判断は、ICRPの2007年勧告(Publication 103)で出された、緊急事態期(緊急時被曝状況)20~100ミリシーベルト、事故収束後の復旧期(現存被曝状況)1~20ミリシーベルトに基づいているようだ。文部科学省は、4月19日、『福島県内の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について』という通知を出して、年間20ミリシーベルト(1日8時間屋外にいるとして、1時間では3.8マイクロシーベルト)を上回った県内の13の小中学校と保育所・幼稚園に対して、屋外活動を控えるよう県教育委員会に通知したんだ〔注:その後9つの校・園は解除されている〕。」

ぺた「でもたしか、国は、年間20ミリシーベルトを超える飯舘村や浪江町の一部を『計画的避難区域』」に指定して、住民を他の地域に移転させようとしているんですよね。子どもに対する基準としては、ずいぶん高すぎませんか?」

ぴた「おっ、珍しく鋭い質問だね。いまこの20ミリシーベルトという基準をめぐって議論が沸騰しているんだ。日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は、文部科学省が定めた放射線量は高すぎるからもっと低い基準値を設定すべきだという声明を出している。それから、さっきぺた君が言っていた小佐古内閣官房参与が辞任した理由の一つは、『国際標準とヒューマニズム』に照らして、20ミリシーベルトはあまりにも高すぎる、ということだったね(全文は、NHK「かぶん」ブログを参照)。ICRPの勧告は大人を対象にしているし、20ミリシーベルトは上限値であって、子ども年20ミリシーベルト基準は撤回すべきだとして、市民団体が、厚労省・文科省・原子力安全委員会と交渉を行っている。子どもについては、今後、基準が厳格化される可能性もあるんじゃないかな。」

ぺた「大学生はどうなんですか? 子どもに入らないんですか?」

ぴた「うーん、難しいな。最近の学生は、身体は一人前だけど中身は・・・なんて茶化している場合じゃないね。一般的には、若いほど放射能に対する感受性が高いから、できるだけ被曝量が低いにこしたことはないと思うよ。」

ぺた「大学では独自の基準を出していないんですか?」

ぴた「独自の基準を出さないというのがこれまでの姿勢だ。政府見解に準拠していると言っていいと思うよ。」

ぺた「日本の法律の中には、なにか基準はないんですか?」

ぴた「『電離放射線障害防止規則』によれば、放射線業務従事者の被曝限度は、5年間で100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルト(妊娠する可能性がある女子については、3か月につき5ミリシーベルト)を超えてはならないと定めている。『放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律』などによって定められている『放射線管理区域』は3カ月につき1.3ミリシーベルトだから、1年だと5.2ミリシーベルトになるね。」 

ぺた「それなら、今回なんで5ミリシーベルトに設定しなかったんですか?」

ぴた「これは推測だけど、5ミリシーベルトに設定したら、社会的な影響が大きすぎるからじゃないかな。かりに5ミリシーベルトを上限としたら、福島市民を含めた数十万人が避難しなければならなくなる。20ミリシーベルトというのは、政策的判断も入って決められた数値だろうね。このことは、先日の教職員に対する大学主催の説明会でも、フロアからの質問に答えて講師の先生がそう言ってたな。」

ぺた「じゃあ、人体実験ですか? 僕らはみんながんになってしまうんですか?」

ぴた「ICRPによると、放射線を全身に一度に浴びると、がんなどで死ぬ危険は1000ミリシーベルトあたり5%、つまり、100ミリシーベルトでは0.5%高まるとされている。ただ、ICRPは、LNT仮説は放射線管理の目的のために用いるべきであって、微量な線量の被曝による発がんやがん死などを論じるために用いるべきではないと言っているから、そうだとすると、20ミリシーベルトでは0.1%高まるとは言い切れないことになる。また、この世の中には様々なリスクが存在するから、この程度であれば、喫煙や野菜不足のリスクのほうが高いという研究もあるね。」

ぺた「でも僕はたばこを吸わないし、食習慣は自分で変えることができますよね。福島県外から大学に行けば必ず放射能のリスクに曝されるわけだから、その説明は納得いかないですよ。」

ぴた「たしかにそうだね。リスクにも回避できるものとそうでないものがあるからね。低線量による被曝のリスクが低いとしても、自分が、放射線によってがんに罹らない・死なないという保証はないものね。費用や社会的な影響を度外視して考えれば、被曝は低ければ低いほうがいいんだろうけど、何ミリシーベルト以下であれば絶対に安全だという領域がないのが悩ましいね。」

ぺた「先生はこの問題についてどう考えているんですか? もう四十途に入ったから、被曝しても仕方がないと諦めているんですか?」

ぴた「いよいよきたか。そりゃあ、僕だって放射能の影響は怖いよ。20年後、30年後にどうなっているかなんて、誰にも分からないでしょ。なんで福島に来ちゃったんだろう、GWは生まれ故郷の香川でのんびり瀬戸内海を眺めてうどんを食べていたかったなあって思うときもあるよ。でも、うどんは一番の好物だけど、今は百パーセント福島市民だよ(笑)
ブログでも触れたけど、震災対策・復興支援室のメンバーとして飯舘村へのボランティアに行った時に感じた、避難地域に指定されたところに住む人々の切実さ大変さについては、今度のゼミでみんなで話し合いたいと思う。
僕たちがいま議論しているのは、避難地域に指定はされていないけれども、放射線量が比較的高い地域で、大学として、また個人としてどんな行動をとるべきか、ということだけど、自分のなかにもいろいろな考えがあって、なかなかまとまらない。
ただし、いろんな議論があって、社会にはさまざまなリスクがあるとはいっても、交通事故を防ぐ努力をするように、よけいなリスクは避けたいのが人の心情だし、そういう努力をするのが当然だと思う。福島市の現状については、残念ながら、放射性物質の中にはセシウム137(半減期30年)のように物理的半減期が長いものが含まれているから、放射能で汚染された地域が元に戻るには相当な年月がかかるだろう。でも、だからといって、何もせずいていいわけがない。一定程度までは、人の力によって、①放射線量を低下させたり、②被曝量を低下させたりすることは可能なはずで、そのための政策や努力を幅広く追求することは最低限やるべきことじゃないかな。」

ぺた「人の力で放射線量を低下させるって、どういうことですか? あっ、郡山市でやっているような、学校の校庭の土を除去するとかですか?」

ぴた「以前の中川先生のブログ記事『ライフラインとしての保育園』(こちら)にもあったように、ICRPは、事故後、当局(国、自治体)は、建物の浄化、土壌および植生の改善、畜産の変更、環境及び農産物のモニタリング、正常な食品の提供、廃棄物の処理、情報、ガイダンス、指示及び設備の提供、健康監視、小児の教育、特定の被ばくグループ及び一般公衆に関する情報の提供など、あらゆる防護方策を実施すべきであると指摘しているんだ(『原子力事故または放射線緊急事故後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用』(ICRP Publication 111))。ICRPが、『警戒区域』や『計画的避難区域』に指定されていない福島市について、『長期汚染区域』に該当すると判断しているかどうかははっきりしないけど、そう考えるべきだという意見もある。ぺた君が言うように、郡山市では、放射性物質を取り除くため、地表から1センチの放射線量が毎時3.8マイクロシーベルト以上の15の小中学校と、毎時3.0マイクロシーベルト以上の13の公立保育所について、校庭などの表土を表面から約3センチ除去することを決めて作業を始めたんだ。除去した土の処理方法や費用などの問題はあるが、一定の効果はあったらしい。5月1日には、福島市長や郡山市長らが、高木文科大臣に対して、小中学校などで屋外活動の支障となっている放射性物質を含む校庭の土の除去や、空調設備の整備などで国の支援を求める6市町連名の要望書を手渡している。」

ぺた「大学はどうするんだろう。気になるなあ。国や大学にもしっかりしてほしいけど、自分たちでもできることってありますか?」

ぴた「ICRP文書では、住民の『自助努力による防護措置』も重要だとされている。外部被曝を防ぐには、よく言われるように、①遮蔽、②距離、③時間の三原則を守ることが大切だ。内部被曝については、①呼吸、②皮膚、③食べ物から体内への侵入を防ぐ必要があるね。」

ぺた「ぴたさんや、震災対策室の先生は何か気をつけていることがありますか?」

ぴた「福島市民は意外なほど気にしていないみたいだけど、対策室のメンバーは、念のため、マスクと帽子と軍手を着用して長袖を着ているよ。でもだんだん暑くなってきたからけっこうきつい。オレンジやきのりはすぐに脱ぎたがるし(もとから?)、レッドひろやすは息苦しくなってマスクから鼻だけ出していて、周りから『意味ないじゃん!』って、突っ込まれているよ(笑)。グリーンちばちゃんは、部屋の換気扇を回していなかったら、ガスストーブの不完全燃焼であやうく死にかけたんだよ。こうなると、放射能のリスクよりも高いかもしれないね。あとは、雨の日は大気中の放射線が落ちてくるから、傘とかレインコートは忘れずに。外出から戻ったら、手洗いとかシャワーとかきちんとして洗い流すことが必要だ。忘れがちなのは靴底のドロを落とすことかな。」

ぺた「なんだか面倒くさいな。すぐ忘れちゃいそうですね。」

ぴた「福島市や福島大学の放射線量は下がってきたけれど、放射線物質がなくなったわけではない。『平常時』ではないし、政府から避難すべきだと言われていなくても用心して生活していかなければならない地域であることは、十分認識しておくべきじゃないかな。放射線リスク軽減のために、福島を離れる・福島に近寄らないという選択肢も確かにあるし、原発の状況や大地震の可能性を考えれば、そうした選択肢を考慮しないでいいというわけではないけれど、政府や自治体が避難を指示していない段階で、皆それができるわけではないことも事実だよね。いま住んでいる土地を離れて、仕事や生活が続けられるかという問題もあるからね。
今の福島市を放射線リスクのない事故前の状況に直ちに戻すことは不可能で、リスクが残り続けることが避けられないのならば、今後は、個人の被爆量をできるだけ少なくするために、一定の目標値を設定してその実現のために、国・自治体、大学、そして個々人が相互に連携しながら可能な限り幅広い防護措置を積み重ねる努力をするべきだ、という主張が今後は強まってくのではないかな。どう考えればいいか、みんなが悩んでいて、対策室のメンバーの考えも各人各様だ。福島にいることのデメリットだけではなく、いることのメリット、離れることのメリットとデメリットも、みんな真剣に考えていると思うよ。
学生のみんなや大学についていえば、国や自治体、そして大学が被爆リスクを下げる努力を重ねるのは当然のことで、それでも残ったリスクが、一人ひとりにとって許容できる範囲かどうかを判断することができるよう、大学が条件を整えることが大事だと思っているよ。5月12日に授業を開始する場合には、全員の希望を全て満たすことは不可能かもしれないけれど、他大学での単位取得や休学など大学側が学生のみんなに可能な限り幅広い選択肢を準備し、それぞれの判断をできるだけ尊重していくことが重要じゃないかな。」
〔注:大学の現在の放射能対策については、5月2日学長メッセージをご覧ください。そこでは、①被曝を低減するための注意事項等についてのマニュアルの作成・配付、②原発事故の状況及び放射線量に関する情報収集、③大学構内での放射線量のモニタリングの実施、④希望者へのスクリーニングを実施する体制の整備、⑤心身のストレスに対する心のケアへの配慮、が挙げられていますが、学類としては、「授業開始に当たって」のコメントでも書いたように、より総合的な対策に取り組んでいきたいと考えています。〕

ぺた「なるほど。自分でもいろいろと情報を集めて、親とも相談しながら、どうするか考えてみたいと思います。それに学生は当事者なんだから、どんどん意見を表明しないといけないですね。学生団体も要望書を出したということだし、ゼミやサークルの友人とも話をしてみたいと思います。」

ぴた「それでこそ、ビックブラックゼミナールの一員だ。また連絡してね。バイバイ」


**************


 この記事を書き始めて、すでに1週間近くが経とうとしています。知れば知るほど、書けば書くほど、悩みは大きくなっていきました。

 「専門家ですら説明が難しいことを、素人の自分たちが誤りなく伝えることができるのだろうか」「教員の間でも多様な意見がある中で、一つの意見の押し付けにはならないだろうか」「余計なことをしないほうが、あとでいろいろと文句や批判を受けずに済むのではないだろうか」・・・いろいろな思いが頭をよぎりました。

 にもかかわらず、最終的にこの記事を「ボツ」にはしなかったのは、「人はみな自分の人生の主宰者である」という思いからです。百パーセント安全とも危険とも言い切れない不確実な状況の中にいるからこそ、人生の主宰者として、皆さんがよき選択・決定ができるように支援する責務が私たちにはあると考えています

 このブログ記事が、一人ひとりが自分で考える必要があること、ある論点について様々な意見が存在するということを意識化し、皆さんが、自ら考え、また家族や友人たちと議論を進めるきっかけとなれば幸いです。


※ 放射能・放射線についての情報は、次のサイトを参考にしました。

・国立大学法人広島大学放射能対策基本情報ポータルサイト(http://aboutradiation.hiroshima-u.ac.jp/
・独立行政法人放射線医科学総合研究所(http://www.nirs.go.jp/
・独立行政法人日本原子力総合開発機構(http://www.jaea.go.jp/
・財団法人放射線影響研究所(http://www.rerf.or.jp/
・社団法人日本医学放射線学会(http://www.radiology.jp/
・社団法人日本アイソトープ協会(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/1,html
・福島県災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震による被害状況即報」(http://www.pref.fukushima.jp/j/index.htm
・独立行政法人国立がん研究センター(http://ncc.go.jp/

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