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ガンバロウ福大!行政の「結」

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する東日本大震災をきっかけに、福島大学行政政策学類の教員有志でブログを開始しました。福大行政に関わる情報共有・情報発信の場として、このブログが、読者のみなさんとわたしたちの、また、みなさん同士の結節点になれば嬉しいなと考えています。一緒に手を携えて、この難局を乗り切っていきましょう。     (2012年3月26日記)

映画『コトコトコトコ』、制作秘話

こんにちは、昼の震災対策室からおやです。
今日は、福大の誇る映画人、久我先生から、映画『コトコトコトコ』の制作秘話をお話しいただきます。
この映画は、福大生のプロ映画人の共同作業の成果であり、来月から始まるされるゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014での上映が決定しています!

学生さんの、久我さんの、そして、この映画に携わったプロ映画人のみなさんの思いを、記事から感じ取って頂ければ幸いです。

それでは、久我さん、よろしくお願いします!

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 寒風が身にしみる今日この頃、熱かった夏を思い出しています。嵐のように過ぎ去った一夏が生み出した産物とともに。地を踏み固め、種を蒔き、水を撒き、不安な気持ちで天気模様を伺った1年に及ぶ苦闘を振り返りながら。

 あぶくま学生支援基金の助成をいただき、福島大学の学生およびプロの映画人の皆さんの共同作業の末に完成した映画『コトコトコトコ』、今年2月27日より開催されるゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014のフォアキャスト部門にて上映されることが決まりました。この間に賜った多くの方々のご協力、激励に心からの感謝を込めて、報告をいたします。

 『コトコトコトコ』の構想が持ち上がったのは、一昨年の11月のこと。地域政策科学研究科の大学院生でもある映画プロデューサーの前田茂治さん、数々の映画を手がけてこられた映画監督の横井健司さん、そして、私、3人のおっさんたちが、若者たちの歓声に溢れた学園祭の風景を眺めながら、福島大学を舞台に映画を作れないかと夢想していたのがすべての始まりでした。
 とはいえ、一本の映画を作り上げるためには、相当の資金、人材、機材、時間などが必要で、徒手空拳で立ち向かうにはあまりにも無謀な企てに他なりません。その時の私たちの目の前には、天辺すら見えない高い壁が立ちはだかっているように見えました。カフカの『城』のように頑丈な門に閉ざされて中をうかがい知ることはできない、踏み出そうとする一歩先にどんな魑魅魍魎が待ち受けているかもわからない、汚泥渦巻く底なし沼に足をさらわれてずぶずぶと沈んでいく夢を何度見たことでしょう。それでも、重ねてきた年齢は教えてくれました、見る前に跳んでしまえ、自分より仲間を信じろ、世間体など屁の河童。かくして、おじさんトリオは走り出しました。まだ見ぬ映画を夢見て。

 幸いなことに、映画好きの学生さんが数人集まってくれて、シナリオの原案作りからスタートです。私たちの共通認識はただひとつ。エンタテインメントの映画を作る! 震災後、それをテーマにしたドキュメンタリー、劇映画も多く作られてきました。福島に住む私たちならではの視点で、それらの作品に伍することもできるかもしれない。でも、多くの人にとって(少なくとも私にとって)、まだあの出来事を飲み込み、咀嚼し、消化・吸収し、再びそれを外部に提示できる自信はありませんでした。だから、誰が見ても面白いって思える映画を作って、福島大生、ここにありってところを見せてやろうじゃないか。『魔女の宅急便』のキキの手紙を朗読する声が私の耳には響いていました、「落ち込んだりもするけれど、私は元気です」
 だけど、エンタテインメントってどういうこと? 楽しいと思える映画は人それぞれ。楽しかった映画の感想を延々と語っても、誰も納得してくれないなんてよくある話(ひょっとして私だけ?)。さらには、人をエンタテインする(楽しませる)って、どういうことなんだろう。悲恋の映画だって、楽しいこと、あるよね。考え込む哲学映画だって悪くない。そんなことを考えながら、時間無制限、言論の自由無制限、何でもありのバトルロワイヤルの開幕です。初めての経験の人も多く、手探りしながら、ひたすら堂々巡りの議論が続きます。そのうちに、個人的に好きな映画を熱く語ることから始まって、胸にキュンとくる台詞や仕草を紹介しあうさまは、企画会議というよりも、もはや告白大座談会。
 そんな話の続く中、横井監督から出されたお題は、Another World、猫に導かれて別の世界に迷い込む大学生のお話を考えてみよう。私、思わず、のけぞってしまいました。タイム・トラベルものと同じく、パラレル・ワールドものは、魅力的であると同時に恐ろしい。そこかしこに、パラドックスの罠が待ち受けている。似通ってはいるけれどまったく別の世界、二つの世界をどのようにして描き分けるのか、二つの世界はどのように関わり始めるのか、A世界の住人XさんはどうやってB世界の住人である本人と出会うのか、その時、A世界はどうなってしまうのか。初心者たちにとって、頭の痛い問題は次々と出てきます。あちらを立てればこちらが立たず、解決策はまた別の難問を用意している。誰もが気づかずうちに、映画がついてもいい嘘とついてはいけない嘘の区別、リアリズムとフィクションの理想的な融合、台詞一つで全体に変更を迫られる恐ろしさについて、真正面から向き合っていたのでした。壁一面に張り出された数十枚の箱書き、そこにはシークエンスごとの物語の進行が書き込まれています。それらをまとめて、ようやくシナリオの形が見えてきたのは3月のこと、実に5ヶ月に及ぶ悪戦苦闘の末でした。

 年度が変わって4月になると、1年生を始め、フレッシュなメンバーも続々と加入してくれました。彼らができあがったシナリオに抱く疑問こそが、私たちにとっては他の何にも代え難いものでした。映画は、初めて見る人にわかってもらうことが大事、後付けの説明の余地はまるでない。さんざん議論し尽くしてきた私たちには見えていなかった欠陥も、次々と発見されました。シナリオの微調整は結局、撮影の最終日まで続くことになります。それと併行して、役者さんのイメージ作りと撮影準備も始まります。この役を演じてもらいたい理想の役者さんは誰? どんな服装をしてどんな歩き方をする? どんな声でどんな喋り方をする? 決して映画には描かれることのない登場人物の好きな本や音楽、血液型や星座まで決めました。さらに、学内を数時間かけてくまなく歩いて、ロケハンをして撮影場所と時間を検討します。撮影時期によっても光の具合や強度が違うことを考慮しながら、頭の中にある漠然としたイメージをより具体的なものにしていくのです。それをもとに絵コンテ、カット割りを実際に紙に書いてみることで、少しずつ私たちの絵はできあがっていきました。

 6月、制作部、撮影部、美術部に分かれた学生は、それまでの共同作業とは別に個々の作業に追われます。撮影日程や役者さんのスケジュールを管理する制作部は指令塔として全体の枠組みを立てていきます。撮影部は、カメラ操作の基礎から教わりながら、シナリオのイメージからより良い絵作りを目指します。美術部は、大道具・小道具の準備、衣装の工夫を凝らします。気がつくと、私の目には見えないところでそれぞれが全力で走り出していました。8月5日の撮影初日には、緊張に満ちた学生の姿が見えました。ほぼ一週間に及ぶ怒濤のような撮影の始まりです。NHKの朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で宮下あゆみ役を好演していた山下リオさんを主役にお迎えし、志保さん、荒井敦史さん、仁科貴さんといったプロの役者さんと共演することになった福大生も台詞覚えや仕草の練習に励みます。さらには、主題歌を作っていただくことになった稲垣潤一さんも友情出演という形で出ていただきました。

 1年にわたって参加してくれた学生は、延べ50人ほど。一週間、学生たちはよく笑い、そして、本当によく泣きました、ちょっとしたミスにも、ちょっとしたほめ言葉にも。私の目には彼らの姿が焼き付いています。泣こうが、笑おうが、汗まみれで喚こうが、彼らに出会えて本当に良かった。
 アフレコや編集を経て完成した『コトコトコトコ』、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014に送られて、数百本に及ぼうかという作品群の中から上映作品として選定されました。学生の頑張りに結果を見せてあげられたことが、何よりも嬉しく思っています。あぶくま学生支援基金に関わる皆さんをはじめ、ご指導、ご鞭撻をたまわった皆さん、本当にありがとうございました。

 えっ、映画の内容について、ほとんど紹介していないって? それは、ぜひ作品を見ていただいた上でお話しいたしましょう。あの熱かった夏を思い出しながら。
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